iPS細胞やSTAP細胞などの多能性幹細胞は何故大きな話題になるのか。
日本に於ける大きな問題は、糖尿病患者の食前のインスリン注射や、腎臓病患者の週3回、毎回4時間の人工透析、アルツハイマーなどの認知症患者対策、人口の半分が罹患するガン治療など高齢化社会の到来と共にこれらの患者数が急増していることである。
これらの問題に対処する方法としてガンに対する粒子線治療や、患者の免疫細胞を強化して体内に戻す免疫治療など様々な先進的な治療方法が考えられ実行されているが、その中で今後最も効果が期待されているのが、多能性幹細胞を利用した再生医療である。
最近のマウスによる実験では、MUSE細胞や脂肪組織由来間葉系幹細胞を血液に供給すると、多能性幹細胞が体の中を循環し患部を探して患部に集積して自動修復することが認められている。従来の治療が診療により患部を特定して治療する鉄砲とすると、多能性幹細胞の自動修復は標的を自動追尾するミサイルに例えられる。
また、患者自身の細胞をiPS細胞に初期化して培養し、必要な細胞に分化された細胞による細胞シートや立体的な臓器の作製が可能になることにより、義肢や人工臓器などが患者自身の細胞により取って代わられる可能性もある。
これらの治療には多数の多能性幹細胞が必要になるが、多能性幹細胞を人工的に作り出す方法としては、@iPS細胞、ASTAP細胞があり、体に備わる組織幹細胞で多能性を持つものを分離するものとしてはBES細胞、CMUSE細胞、D骨髄E臍帯血F脂肪組織由来間葉系幹細胞などがある。
多能性幹細胞を得る手段としては上記の如く様々な方法があるが、@細胞を採取してその中から多数の多能性幹細胞を取り出せるもの、A培養効率の高いもの、B腫瘍を作る可能性が低いもの、C必要な細胞への分化が可能なものなどの課題があり、これらの課題をクリアする多能性幹細胞があれば患部の自動修復や人工臓器が不要になる可能性が目に見えてくる。
STAP細胞が注目されている理由はこれらの課題をクリアする多能性幹細胞が人工的に出来るのではないかとの期待があり、胎盤が出来ることも説明されており、これが実現出来れば、子宮ガンや子宮頸ガンなどにより子宮を失った女性に子供が出来る可能性が出てくる。
STAP細胞が多能性幹細胞の主たる供給手段として認められれば再生医療は大きく前進し、現在の治療行為を大きく変える可能性を持っている。STAP細胞の論文作成ミスにより、この実験をフォローする研究者はいなくなるとの意見もあるが、より使いやすい多能性幹細胞の供給源を探すことは再生医療に取って重要な課題であり、多能性幹細胞を作り出す手段として細胞に刺激を与えることは良く知られているので名称は異なってもSTAP細胞と同様の成果が出てくることは間違いない。
この為にSTAP細胞の特許が認可されれば様々な分野に大きな影響を及ぼすことは間違いないが、現在の申請内容は範囲が広すぎてこのままでは通らないのは明確で特許内容の修正が必要になるが、理研の発生・再生科学センターが解体されれば特許内容をフォローする中心の組織が無くなり、特許は成立しなくなる可能性も出てくる。
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