ノルマンディーの英仏海峡に面した漁村エトルタの海岸を描いた作品。エトルタには、カジノやゴルフ場もあり、夏は観光客でにぎわう。石灰層の巨大な絶壁、「アモンの断崖」や「ポルト・タヴァル」(アヴァルの門)などは景勝地として知られる。アヴァルの門の近くには、怪盗アルセーヌ・ルパンが登場するモーリス・ルブランの小説「奇岩城」(1909年)のモデルとなった岩、エギュイユ(針)島がある。この地の風景は、コロー、ブーダン、クールベなど数多くの画家たちによって描かれた。故郷ル・アーブルから北に約20KMのこのエトルタで、モネは1883年1−2月の滞在以降、1886年まで毎年、風景画制作を行った。本作品が描かれた1885年、同地に別荘を持つモーパッサンは、モネが戸外で、同じ場所を異なる時間帯に異なる効果で描く様子を、翌年の「ジル・ブラス」誌の「風景画家の生活」という記事に記している。本作品では、エトルタのカジノのテラスから見た、夕陽の残照に赤く染まる水平線近くに垂れ込めた雲と空、そして逆光によって影になったアヴァルの門の前景の浜辺に3艘の船を配し、1日の終わりの一瞬の輝きと静けさを描き止めている。(ポーラ美術館作品解説資料より)
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